Info
 
 
クリキュラ が作り出す"黄金の繭"
 インドネシアの人々にとって、蛾の幼虫は農林業の害虫として駆除の対象であり、その繭から野生のシルク(ワイルドシルク)を得て収益を得ようという対象ではなかった。
しかし、1994年、インドネシア共和国ジョグジャカルタ王室は、低所得農業従事者の収入向上と環境保全及び伝統工芸の育成を目的として、地域固有の未活用資源『野生の蛾の繭:「アタカス」と「クリキュラ」』の活用による地場産業振興育成事業を始めた。
現在インドネシアでは、日本からの有志の協力を得、農林業の「害虫」であった野生の蛾の幼虫は、その繭(抜け殻)が優良な野生のシルクを生産することから「益虫」としての評価を得られるようになった。また、野蚕開発事業は、美しい本来のジャワの森復活に向けて植樹活動を続けながら自然環境との共生による持続的な社会の構築に向けての活動を進めている。
繭の家蚕(かさん)と野蚕(やさん)

 

日本で繭(まゆ)といえば、一般によく知られているのは、蚕(かいこ)。
蚕は、蛾(ガ)の仲間で、絹の糸をとるために人工的に飼育されていて、白い繭を作り、絹の繊維となる。
この蚕たちは人工品種で、養蚕家たち抜きでは生きていけないので、特に家蚕(かさん)と呼ばれているが、
この蚕の他にも、自然界には、絹のような繊維を吐いて繭を作る野生の蛾が何種類もいる。
このような蛾たちを、いわゆる普通の蚕=家蚕(かさん)に対して、一般に「野蚕(やさん)」と呼ぶ。
"黄金の繭"の蛾(ガ)、 クリキュラ
  ヤママユガ科の一種で、ジョグジャカルタを中心としたインドネシア一帯からマレーシアの一部に分布する、貴重な蛾。
野蚕されている蛾の一種。
黄金に輝く秘密
 

クリキュラが作る繭は、本当に黄金色に輝いている。
繭といえば、糸が何重にも吹き付けられて形作られていて、繊維が表面を覆ってふわふわした印象の表面を持っているというのが一般的だが、クリキュラの繭は本当にピカピカしていて、黄金色の金属的な光沢を放っている。
これは、全ての繭が形を保つための接着剤のような役目をする「セリシン」という動物性たんぱく質で固められており、このクリキュラが作る繭には、このセリシンが非常に強力に塗りこまれているため、あの光沢感を生んでいる。
そして黄金色に発色するのは、クリキュラが食用とする葉(アボガド・マンゴ・ランブータン・グアバ・シルサック・ティー・カシューナッツ・チーク・マホガニー等)に含まれる黄色の色素が、繊維に入っているからだといわれている。

特徴
  多様な色相、多孔性による吸湿・保温性能力、厳しい外部環境に対する抵抗性・抗菌性・紫外線の吸収能力。
自然の恵み
  クリキュラの繭は自然の恵みともいえ、収穫量が安定していないため、貴重である。
染色等の処理は施さず、自然のままの手触りと色をお楽しみいただけます。
用途(繭)
  コサージュなどのアクセサリー               *一つ一つの繭を花びらに見立てて
  silk
用途(繭シート)
  かばん、ランプシェードなど
  silk
  *2005年3月開幕の「愛・地球博」(愛知万博)のパビリオン「中部千年共生村」の外壁として採用され、建材としても利用できる。